これまでにB細胞でG5PRが欠損するとB細胞抗原受容体架橋後に細胞増殖が起こらず、JNKとBimの活性化上昇を伴ったアポトーシスに陥ることを明らかにしてきた。今年度はT細胞におけるG5PRの役割を明らかにする目的でLck-creトランスジェニックマウスとfloxed-G5prマウスを交配し、T細胞特異的G5PR欠損マウスを得た。このマウスの胸腺は萎縮し、胸腺細胞は正常の8分の1に減少していた。Double negative (DN)細胞は正常マウスとほぼ同数であったが、Double positive(DP)細胞は正常の10%しか認められず、Single positive(SP)細胞は殆ど認められなかったことからG5PRはDN細胞からDP細胞への分化に必須か、DP細胞の生存に必須であろうと考えられた。G5PR欠損B細胞は培養中に高率にアポトーシスを起こして死滅すること、またTUNEL解析によって胸腺の皮質においてアポトーシスに陥っている細胞が増えていることから、G5PRはDP細胞の細胞死の抑制により重要な役割を果たしているだろうことが示唆された。G5PRは脱リン酸化酵素結合制御ユニットであることから、胸腺細胞での種々のキナーゼ活性を見たところ、JNKとp38 MAP kinaseの活性の亢進が観察された。これらの生化学的異常が胸腺細胞のアポトーシスの原因となっているのかについて今後検討を加えていく。
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