本研究は、医療分野において頻発している事故・ニアミスの防止を目的として、医療行為に内在するリスク要因の洗い出しと分析・評価を行う医用HAZOP法を新たに開発し、一般外科手技に関する臨床教育における有用性を検証することにある。 平成17年度は研修医に対して外科手技に関するHAZOP演習を行い、事後アンケートを分析した。演習参加により安全意識向上に影響することが判明し、結果を日本医学教育学会において発表した。扱った題材は気管挿管、脊椎麻酔、中心静脈穿刺などである。 さらに、演習を専門医レベルに対しても試行し、HAZOP演習の手法に関して専門医において評価が高いことが判明した。椎間板ヘルニアに対する演習の分析結果を日本脊椎脊髄病学会で報告した。平成18年度は手術治療による合併症のうちひとつを予めターゲットにしたHAZOPや、看護師や薬剤師などのコメディカルへの適応を試みた。テーマとしては人工股関節置換手術、転倒転落事故の要因、注射箋変更管理などである。 結果としては、HAZOP演習は網羅性において優れており、ほかのリスク分析手法につなげて院内における対策を計画できた。加えて、HAZOP演習が外科手技だけでなく医療業務全般に応用可能であり、複数の職種が参加するリスク分析において有用であった。 課題として演習に長時間要することが判明したので、医療行為の工程をまとめる作業やHAZOPシートを自動生成するソフトウェア開発が必要と考えられそのプロタイプを開発した。また、当初計画していたもののHAZOP演習の有無による事故報告の差に関しては、報告絶対数が少なく検討できなかった。
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