研究概要 |
本研究の目的は,糖尿病検診として糖尿病遺伝子診断検査を実施することによる影響,すなわち利益と損失を,医学的な効果だけなくQOLや医療経済等の多方面から評価することである. 1.糖尿病モデルの作成 研究代表者が以前に作成した糖尿病モデルを改良して,糖尿病検診として糖尿病遺伝子診断検査を実施するかしないかという選択分岐点を持つ判断樹を作成し,シミュレーションモデルによる決断分析を行った.ただし,本報告書作成時点では基本的な数値での試算に留まっており,入力した数値の妥当性に問題があり,生存年数のみでなくQOLや医療経済的な指標からの検討は不十分のままである.したがって,結果を公表する段階には至っていない.シミュレーションについては今後も研究を継続し,モデルに修正を加えて再検討を行い,学会もしくは論文として公表できるように進めていく予定である. 2.関連研究の検索と収集 関連する参考図書,データベース(MEDHNE,医学中央雑誌)等を検索し,(1)2型糖尿病の発症および進展に関連する遺伝子,(2)乳がんや肺癌等,すでに実施されている遺伝子診断による健康改善効果,(3)遺伝子診断に関する臨床決断分析および医療経済的評価の3点について,資料を収集した.その結果,遺伝子診断に関する分子生物学的な研究は多いが,健康改善効果を実証した研究や,経済的影響まで言及した研究は極めて少なかった.つまり,この種の研究では理論が先行し実際の成果が曖昧なままに糖尿病遺伝子診断が進められようとしており,診断のコストに見合った効果が得られるかどうかは現段階では不明であることが確認された.
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