研究概要 |
一般に、ディジタルシステムでは、写真濃度が撮影線量に依存しないため、どのような線量でも適正写真濃度が補償される。しかし、臨床で使用する際には、目的に応じた画質が保証される撮影線量(線質や線量)を、被曝線量を考慮して決定する必要がある。本研究では、Csl:Tl蛍光体を検出器に用いたFull-fieldディジタルマンモグラフィシステム(GE社製Senographe DS)の撮影線量と信号検出能について実験を行い、画質と被曝線量の関係を検討した。 観察資料を作成するために、PMMA1cm,3cm,5cm厚のファントム中央部にそれぞれCDMAMファントム(Contrast Detail Mammography : Nuclear Associates社製)0.7cm厚を配置して撮影した。撮影線量はそれぞれのファントム厚におけるSenographe DSで推奨される撮影条件(ターゲット/フィルタの選択および入射条件)を基準線量とし平均乳腺線量を求めた。(1)撮影管電圧24,26,28,30,32,34kV、ターゲット/フィルタMo/Mo,Mo/Rh,Rh/Rh、ファントム厚1.7,3.7,5.7cmの組合せにおける同一平均乳腺線量で撮影する。(2)それぞれの組合せにおいて、基準線量の200%,150%,100%,80%,40%,20%の各入射線量で撮影する。(3)検出能の比較は、ファントム画像の観察結果から求めた。ディジタル画像の物理特性は、ディジタル特性曲線,MTF(Modulation Transfer Function),WS(Wiener Spectrum),NEQ(Noise Equivalent Quanta),DQE(Detective Quantum Efficiency)を測定することで比較した。 被曝線量を一定にした場合、検出能の比較において、1.7cm厚では線質の違いによる有意な差は見られなかったが、Mo/Moの検出能が高く、Rh/Rhが低い傾向になった。3.7cm厚でも線質の違いによる有意な差は見られなかったがMo/Moの低管電圧撮影で検出能が高く、Mo/Moの高管電圧撮影で検出能が低い傾向が見られた。5.7cm厚ではRh/Rhの検出能が高く、Mo/Moの検出能が低い傾向が見られた。ディジタル特性曲線はMo/Mo,Mo/Rh,Rh/Rhの順に線量に対して感度が高くなる。WSは逆にMo/Mo,Mo/Rh,Rh/Rhの順に値が大きくなることがわかる。 平均乳腺線量を一定にした場合、PMMA1cm厚と3cm厚では焦点/フィルタの線質の違いによる有意差は認められなかったが、PMMA5cm厚ではRh/Rhの検出能に有意差が認められた。また、線質が同じで照射線量を変化させた場合、画質は線量の増加に伴って向上したが、メーカが推奨する基準線量の60%から150%の線量範囲では有意差は認められなかった。
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