研究概要 |
現在・欧米では医師の日常診療に対するプロとしての臨床能力(パフォーマンス)の評価が注目されている。我々はこの医師の臨床パフォーマンスに対するアセスメントを実施するために、プロとして求められる臨床能力を列挙した。 平成17年度の研究では、そのうちの1)病態の正確な把握、2)診断の妥当性、3)診療方針の立案能力、4)臨床推論の能力などは、仮想症例モデル(シナリオ)を利用した筆記・論述試験により、評価が可能であることを見いだした。一方、平成18年度はさらに、5)コミュニケーション能力、6)患者教育能力、7)患者の心理社会的問題への対応能力、8)省察的実践能力など、より深い臨床能力の評価法を検討した。 今度は、模擬患者さんよりも本物の患者さんからのアセスメントが有効であると考え、その評価法の考案をめざした。すなわち、病院に来院した初診患者に対して、診療がすべて修了した後に、臨床医のパフォーマンスについての聞き取り調査をすることにより評価した。 まず、この調査の評価項目であるが、a)自らのプロブレムが充分受け入れられたか、b)診療行為に丁寧さと敬意が感じられたか、c)診断の内容が解りやすく信頼できたかの3項目が重要であると考えた。実際には、本研究を理解した第三者(医学生)が、患者さんと対面してa)〜c)についてrating scale(4.とても良い、3.かなり良い、2.あまり良くない、1.良くない)を用いて評価する方法である。そこで、山口大学附属病院の総合内科を受診した初診患者77名に対して医師Aのパフォーマンスアセスメントを実施した。その結果、医師Aの評価は、項目a),b),c)で4が約60%、3が約40%、2は0%、1は0%と妥当な結果が得られた。 この度の研究から、症例シナリオを用いた記述試験と、患者への面接調査により医師のパフォーマンス・アセスメントがある程度可能となった。
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