研究概要 |
佐賀大学医学部附属病院関連初期臨床研修プログラムで研修を行っている研修医および,佐賀大学医学部附属病院で"紙カルテ時代"の研修・診療を経験し,現在研修医の指導に関わっている医師からの聞き取り調査,およびアンケート調査を行った. 1.研修医は電子カルテの使用により,誰の記載も読みやすいので患者のことが把握しやすい,どこででも閲覧できるのでデータを迅速に把握できる,血液データや画像所見の経時的変化が頭にはいりやすい,印刷が出来るので症例呈示しやすい,と感じている.その一方で,直接データを書き写したり画像をスケッチしたりしないので,血液データや画像が頭に入りにくい,とも思っていることがわかった. 2.指導医の多くは,記載はよくまとめてあるが,患者のデータや画像が頭によく入っていない,と感じている.診療記録を病棟以外から記載できるので病棟にいる時間が減った,という意見が聞かれた. 調査をまとめると,診療記録は一見,きちんと記載されているように見えるが,いざ症例呈示をさせてみると,患者の病態把握の上で不可欠な検査数値を覚えていない,患者の病態把握の上で不可欠な画像が読影できない,という状況が見えてくる.何も見ずに症例呈示をさせる,画像をきちんと読影させることなどを意識的に教育企画として行う必要があると考えられた."電子カルテ時代"には,研修医が理解していなくても診療記録の形が整うようになった.きれいにまとめられた記録には落とし穴がある,ということを念頭に指導していくことが必要と思われた.
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