研究概要 |
本研究は健康保険のレセプトデータを用いて、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無別にみた禁煙の胃・十二指腸疾患医療費への影響について検討することを目的とした。 平成18年度には研究の2年目として、A健康保険組合に所属する男の事務系職員680名(年齢35〜74歳)のヘリコバクター・ピロリIgG抗体を測定するとともに、定期健康診断時に喫煙状況について回答して貰った。健康保険のレセプトは2002年4月〜2005年9月までの3年6ヶ月間のデータを用い、胃・十二指腸疾患による受診件数と医療費をヘリコバクター・ピロリ感染別・喫煙別に集計した。喫煙はNever-smokersとEver-smokersの2群に分けた。なお、胃・十二指腸疾患とは胃・十二指腸炎と胃・十二指腸潰瘍とした。 ヘリコバクター・ピロリ陽性率は、35〜44歳で74/225(32.9%)、45〜54歳で158/261(60.5%)、55歳以上で116/194(59.8%)であった。ヘリコバクター・ピロリ感染別・喫煙別に胃・十二指腸疾患医療費の指標をみると、年間100人当たりの受診件数は、ヘリコバクター・ピロリ陽性・喫煙群では24.1、ヘリコバクター・ピロリ陰性・非喫煙群では5.9であり、前者は後者の約4倍であった。ヘリコバクター・ピロリ陽性・非喫煙群(18.7)とヘリコバクター・ピロリ陰性・喫煙群(10.9)は両者の中間の値を示した。 年間1人当たりの胃・十二指腸疾患医療費は、ヘリコバクター・ピロリ陽性・喫煙群では5,216円、ヘリコバクター・ピロリ陰1生・非喫煙群では818円であり、前者は後者の約6倍強高かった。ヘリコバクター・ピロリ陽性・非喫煙群(1,919円)とヘリコバクター・ピロリ陰性・喫煙群(2,566円)は受診件数と同様に、ヘリコバクター・ピロリ陽性・喫煙群とヘリコバクター・ピロリ陰性・非喫煙群の中間の値であった。
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