研究概要 |
平成19年度にはA健康保険組合の被保険者1,054人を対象としてヘリコバクター、ピロリ菌抗体を測定するとともに、喫煙状況並びに胃、十二指腸疾患の治療歴などの情報を得た。平成17,18年度に調査した1,259人を加えた合計2,313人を対象として,ヘリコバクター、ピロリ菌抗体有無別および喫煙状況別に6グループに分類して,禁煙による胃、十二指腸疾患医療費に与える影響について検討した。なお,医療費の情報は,A健康保険組合の2004年4月〜2007年3月の3年間のレセプトデータを使用した。 ピロリ菌(+)、喫煙(+)群はピロリ菌(-)、喫煙(-)群と比べて,100人あたりの受診件数/年(受診件数)は約2倍,1人当たりの医療費/年(医療費)は約5倍高かった。ピロリ菌(+)、禁煙(+)群はピロリ菌(+)、喫煙(+)群と比べて,受診件数はほぼ同じであったがい医療費は約半分であった。一方,ヘリコバクター、ピロリ菌抗体陰性である禁煙(+)群と喫煙(+)群を比較すると,受診件数と医療費はともに,禁煙(+)群の方が喫煙(+)群より大幅に多かった。 禁煙群と非喫煙群を比較すると,ヘリコバクター、ピロリ菌抗体の有無に関わらず,禁煙群の方が非喫煙群より,受診件数では約1.5〜2倍,医療費では約1.5〜3倍高かった。本研究の結果,禁煙者における胃、十二指腸疾患の受診件数および医療費が非喫煙群のレベル近くまで低下するにはかなりの期間が必要であることが明らかになった。
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