ある種の増殖因子では、その受容体が二量体となって情報伝達を行うことがわかっている。G蛋白質共役型受容体でも同じように二量体化して情報伝達系の調節を行うことがいくつかの研究で明らかにされている。 私たちは主としてウサギ心筋組織標本を用いてエンドセリン受容体の情報伝達系を研究してきたが、薬理学的な検討からウサギ心筋組織標本におけるエンドセリンの作用(リガンド選択性)は従来報告されている他種のものとは異なっていることを明らかにしてきた。その説明として受容体の構造が他種と異なる可能性を検討したが、分子生物学的な解析から受容体の構造は他の種と大きな違いがないことが明らかになった。そこで、受容体の二量体化による情報伝達系の変化がウサギ心臓におけるエンドセリンの不定型な作用を説明しうるかどうかを明らかにする目的で検討を行った。エンドセリン受容体はET_A、 ET_Bの2種類の受容体が存在するが、それらは互いにヘテロダイマーを形成することが示唆された。しかし、そのシグナル伝達系への関与については明確な結果は得られなかった。二量体の形成により情報伝達系の修飾について、さらに、リガンド刺激による受容体の二量体化などについて現在解析を行っている。また、エンドセリン受容体は二量体のみならず、三量体を形成している可能性を示唆する結果も得られた。受容体の多量体形成は多くの受容体で報告されているが、それらの生理学的な意義の解明や、創薬での意義については今後も検討すべき課題と考えられる。
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