研究概要 |
耐糖能異常患者では,血管内皮機能が低下していることを我々はすでに報告している(日本循環学会2004)。この研究結果をもとに,メタボリックシンドローム患者の血管内皮機能をするとともに,CTにより内蔵脂肪面積,インスリン感受性の指標としてグルコースクランプ法により求めたM値,さらに血圧と血中アディポネクリン濃度を測定し,これらの因子と血管内皮機能との関連を調べた。また,メタボリックシンドロームの診断基準を満たさない症例を対照群とした。血管内皮機能については,プレチスモグラフを用いて前腕血流量を測定し,アセチルコリンによる前腕血流量の増加度を測定した。アセチルコリンによる前腕血流量の増加度は一酸化炭素(NO)産生酵素阻害薬による血管内皮からのNO産生阻害下においても測定した。結果,メタボリックシンドローム患者ではアセチルコリンに対する血管拡張反応が低下し,対照群の約50%程度であった。NO産生阻害下では,対照群ではアセチルコリンによる前腕血流量の増加が約50%低下したのに対し,メタボリックシンドローム患者では,ほとんど低下しなかった。アセチルコリンによる前腕血流量の増加度は内蔵脂肪面積および血圧と負の相関を,M値と正の相関を示した。以上の結果より,メタボリックシンドローム患者では,NO産生系を中心とした血管内皮機能障害を認めるとともに,この血管内皮機能障害は,内蔵脂肪の蓄積,血圧の上昇,インスリン感受性の低下,アディポネクチンの低下が深く関与していると考えられた。
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