本研究では、ヒト肝臓由来細胞を3次元培養したミニバイオ人工肝臓(ミニ肝臓)を用いた肝毒性試験を開発する。平成17年度は、ミニ肝臓での^<13>CO_2測定系を開発し、ブドウ糖代謝を主体に検討した。多孔質担体ハイドロキシアパタイトビーズを充填した小型ラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)に、高機能ヒト由来肝癌細胞FLC-7を高密度3次元培養し、リザーバーの培養液をポンプで循環し、閉鎖系で培養した。CO_2/エアーの混合ガスは新規に開発した混合ガス供給装置(特許申請中)より2-5%CO_2濃度で、20ml/minで供給した。培養は37℃のインキュベーター内で行った。培養液交換毎に100mlの培養液あたり、25mgの^<13>Cラベルグルコース(クロレラ工業株式会社)を添加し、リザーバーより排出されるガスを呼気バッグに採取した。採取されたガス中の^<13>CO_2を呼気中^<13>CO_2分析装置(POC ONE赤外分光分析装置、大塚製薬株式会社)で測定した。 ミニ肝臓から排出されるガス中のグルコース代謝物としての^<13>CO_2は、検出可能で最高40‰に達した。バイオリアクターでの細胞数が少ない状態ではグルコース消費は少ないが、細胞が増殖し組織として再構築されるとグルコース消費は急速に増加した。毒性物質として、殺細胞効果を示す濃度の1/100にあたる抗癌剤を加えたところ、抗癌剤を投与したミニ肝臓における^<13>CO_2排出量はコントロールに比較して10-20%低下した。しかし、乳酸産生量、グルコース消費量では差がでなかった。 本研究で開発したミニ肝臓の^<13>CO_2産生からみた肝臓毒性試験法はきわめて感度が高いことが証明された。平成18年度は、グルコース以外の代謝に関しても、他の^<13>Cラベル化化合物を用いて検討する予定である。
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