関節リウマチは滑膜細胞の異常増殖とそれに伴う関節破壊を主病変とした疾患である。一方、悪性腫瘍も同様に細胞の異常増殖と正常組織の破壊を伴う疾患である。申請者は既に平成14-16年度の科学研究費補助金などにより、グリタゾン系の薬物や非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の一部には滑膜細胞に対してアポトーシスを誘導することにより増殖能を抑制する作用があり、PPARγ活性化が関係することを見出した(J pharmacol Exp Ther 2002;302:18-25)。さらに、NSAIDの中でも、選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬の1つであるセレコキシブは、滑膜細胞(Arthritis Rheu 2002;46:3159-3167)や大腸癌細胞(FEBS Lett 2002;531:278-284)に対して、特異的かつ強力にアポトーシスを誘導することを発見した。それらの検討の中で、我々は東京工業大学・半田宏教授らとの共同研究によりいくつかのセレコキシブの誘導体を作製し、さらに強力にアポトーシスを誘導する新規薬物(TT101)を開発した。このTT101は、滑膜細胞に対して、セレコキシブよりも強力にアポトーシスを誘導することを、初年度の本研究により明らかにした(J Pharmacol Exp Ther 2005;314:796-803)。一方、セレコキシブは家族性大腸腺腫症患者の大腸ポリープ数を減少させ、さらに大腸ポリープ摘出後の再発を予防する効果が、共に海外のプラセボを対照とした臨床試験で証明されている。また、大腸腺腫は前癌状態としての意義も指摘されている。そこで、今年度の研究では、大腸癌の細胞株であるHT-29およびSW480に対するTT101の効果を検討した。細胞増殖の程度は、BrdUのDNA取り込み量を指標に検討した。また、アポトーシス誘導作用は、DNA断片化を指標に検討した。HT-29およびSW480は、TT101存在下CO_2インキュベーターにて培養し、断片化したDNA量をELISAにて測定し、さらに細胞の形状によりアポトーシスを確認した。その結果TT101は、HT-29およびSW480に対しても、滑膜細胞と同様に、セレコキシブの約10倍強力なアポトーシス誘導作用を発揮することを明らかにした。本研究の成果は、Anticancer Res 2006;26:3229-3236に発表した。
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