海藻に特有の成分から血管新生阻害物質を見つけだし、血管新生性疾患の治療および予防に道を開くことが本研究の目的である。 褐藻に含まれる硫酸多糖フコイダンについては、これまで抗腫瘍効果を含む多様な生理活性が報告されている。しかし、血管新生の制御に関わる解析はわずかであり、主に臍帯静脈や大動脈の内皮細胞を用いての解析であった。そこで本年度はまず、微小な血管をネットワークとして観察できる鶏胚漿尿膜(CAM)と、ウシ肺微小血管または副腎皮質毛細血管内皮細胞をアッセイ系として用い、北欧地域に分布する褐藻ヒバマタ(Fucus vesiculosus)由来フコイダンの血管新生に対する作用を調べた。その結果、フコイダンはCAM上の血管新生を強く阻害すること、また、増殖に左右されない条件下で微小血管内皮細胞によりマトリジェル上に形成される管腔も、顕著に阻止することを見出した。一方同じ褐藻に存在する酸性多糖で、固形癌における抗腫瘍効果の低いアルギン酸は、微弱な血管新生阻害活性であった。このように、フコイダンによる微小血管新生の阻止が明らかになり、血管新生の阻止活性は抗腫瘍効果と一致する可能性が考えられたため、フコイダンの抗腫瘍効果の一部に血管新生の阻止が寄与している可能性が示唆された(第64回日本癌学会総会に発表(平成17年9月14日):健康産業流通新聞第607号(平成17年10月8日)に掲載)。 次のステップとして現在、日本近海に多く分布する緑藻類ミル(Codium fragile)から、まず海藻特異成分である酸性多糖の粗画分抽出を試みている。
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