研究課題
海藻には特有の成分が存在するが、生理活性は充分に研究されていない。本研究の目的は未踏の材料、海藻から血管新生阻害物質を見つけだし、血管新生性疾患の治療および予防に道を開くことである。血管新生は一つの過程の阻止よりも引き金の抑制が重要であり、その可能性のある硫酸多糖および抗酸化成分は阻害剤として価値が高い。本研究の推進は、血管新生性疾患の阻止と予防に直結した創薬の開発に寄与する。昨年度までに、まず紅藻、褐藻に存在し血管新生の引き金を阻止する可能性の高い酸性多糖の作用を調べ、フコイダン、カラギナン等が強い阻害活性をもたらすことを明らかにした。今年度は、酸性多糖の構造や特質がほとんど調べられていない緑藻類のミルから酸性多糖の抽出を試み、鶏胚漿尿膜(CAM)の血管をin vivoアッセイ系として、粗画分の血管新生への作用を検討した。精製されたフコイダン等に比べれば弱いが、特定の酸性多糖画分に、血管新生を抑制する傾向が認められた。一方、我々は以前から抗酸化成分による血管新生への作用を調べており、海藻由来の抗酸化成分に血管新生抑制作用があるかどうか調べるため、前実験として種々のキサントフィルに関する血管新生への作用を検討した。しかしCAMにおいては血管新生抑制効果が認められなかった。海藻由来キサントフィル類似の抗酸化成分の効果を調べるため、現在抽出を続けている。また海藻由来の酸性多糖によって、血管新生因子bFGFの誘導する物質の合成が抑制される傾向が見られ、この詳細を更に検討中である。これらの成果は、前年度までの成果と合わせ、今日まで生理活性物質として殆ど活用されていなかった海藻由来酸性多糖の血管新生阻止作用を明らかにし、血管新生性疾患の新たな治療および予防の基盤を築くものである。
すべて 2007
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Cancer Sci. 98・2
ページ: 219-25
Neurosciene 145
ページ: 495-504