研究概要 |
バソプレシン(AVP)に対する血小板反応性の個体差に関わる分子基盤を明らかにするため以下の検討を行った。健常成人22名から血小板凝集計を用いてAVP反応群と低反応群を選定し、性年令の一致した反応例と低反応例のペアーを抽出した。血小板中のRNAを抽出し、Hi tachi Ace-Gene上でハイブリダイゼーションさせ遺伝子発現の差を検出した。反応例においては、sodium channel, Voltage-gated, type XI, alpha、mannose-P-dolichol utilization defect 1、eukaryotic translation termination factor 1、cysteine and glycine-rich protein 2、general transcription factor IIH, polypeptide 2,44kDa等の遺伝子発現が増強していた。低反応例では、component of oligomeric golgi complex 6、Hermansky-Pudlak syndrome 3、FERM domain containing 1、adenosine monophosphate deaminase 2(isoforni L)、nudix-type motif 1、cell growth regulator with ring finger domain 1等の遺伝子発現が増強していた。さらに、上記対象者において、血小板蛋白の質量分析を行い、反応例では、protease serine 4 isoform B、keratin 1b、trypsinファミリーが、低反応例では、TPMsk1、TPM3 protein、YWHAZ protein等の特異的発現を認めた。また、血小板産生細胞である巨核球の前駆体を採取し、そのAVP反応マイクロRNA(miRNA)の発現を解析した。抹消血液よりCD34陽性末梢血液幹細胞を分離採取し、トロンボポエチンにより巨核球へ分化誘導した。AVP(10^<-6>M、16時間)添加および無添加下のtotal RNAを抽出し、mirVana^<TM> miRNA Bioarrays(Ambion)上でmiRNA発現の比較解析を行った。AVP刺激時に比し非刺激時で発現が増強していたmiRNAは、hsa let 7d、hsa let 7e、hsa miR 198、hsa miR 99b、hsa miR 98等であり、非刺激時に比しAVP刺激時で発現が増強していたmiRNAは、hsa miR 199a、hsa miR 302b AS、hsa miR 138、hsa miR 373 AS、hsa miR 380 5p等であった。これらのmiRNA群が血小板のAVP反応性に関わっている可能性が示唆された。一方、AVP Vla受容体遺伝子の多型を探索し、プロモータ-242C/Tの単塩基多型が血小板におけるVla受容体遺伝子発現と関連することを見い出した。以上の結果、血小板のAVP反応性に関わると考えられる多くの因子が明らかになった。今後、これらの中から至適検査マーカーを検討していく必要がある。
|