研究課題/領域番号 |
17590487
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
吉田 治義 福井大学, 医学部, 教授 (80135574)
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研究分担者 |
木村 秀樹 福井大学, 医学部, 助教授 (20283187)
高橋 直生 福井大学, 医学部附属病院, 助手 (30377460)
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キーワード | 低酸素 / 腎線維化 / 低酸素飼育マウス / 貧血マウス / VEGF / PAI-1 / TGF-β1 |
研究概要 |
1.低酸素飼育下マウス、虚血マウスの作製 本年度は、まず、低圧性(0.5気圧)酸素環境を恒常的に維持するためのマウス飼育チェインバー(40cm×40cm×120cm)をアトーテック社に製作依頼し、本医学部内の動物実験施設内に設置した。実際に陰圧をかけチェインバーを閉鎖後、0.5気圧が維持されることを確認した後、24週齢の正常マウスを用いて予備実験を開始した。正常マウスをチャンバーに入れ、26日間飼育した。外観は低酸素飼育マウスと通常飼育マウスに著変はなかった。 また、短期の低酸素モデルとして、致死量以下の抗赤血球抗体(100μg)を腹腔投与した貧血モデルマウスを作製した。同マウスでは投与後3日でHtが50%から25%へ減少した。 2.低酸素飼育下マウスの腎組織変化 低酸素飼育マウス腎の光顕的所見では、明らかな線維化やマクロファージなどの炎症細胞の浸潤は認められないものの、著明な近位尿細管上皮の腫大と好酸性顆粒の増加、また、ボウマン氏嚢上皮細胞の腫大が認められた。好酸性顆粒は巨大ミトコンドリア、ライソゾームと考えられ、低酸素下の細胞反応として他臓器で報告された結果(Hist.Histpathol.2002)と類似した。また、VEGF、PAI-1、TGFβ1、type III collagenに対する抗体を用いた免疫組織染色法所見では、皮質深部の近位尿細管に、VEGFとTGFβ1の特異染色を認め、長期低酸素刺激いおいても、低酸素誘導性の遺伝子発現が持続していることが確認された。 次に、虚血マウスの腎組織では、抗体投与後3日で対照に比して、VEGF mRNAが60%、PAI-1 mRNAが160%増加した。高度で比較的急性な貧血による短期間の腎虚血でも低酸素環境と同様の作用を有すると考えられた。 3.今後の実験計画 今後、基礎的検討をさらに進めた後、糖尿病性腎症などの進行性腎障害モデルマウスにおける低酸素の腎病変の修飾を検討し、関連する分子機序を遺伝子発現動態の観点から解析する予定である。
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