研究概要 |
1)進行性腎疾患の病理 進行性腎疾患の代表である糖尿病性腎症と腎硬化症のそれぞれの腎生検例について、臨床病理所見を検討した。その結果、腎機能低下は尿細管間質病変の進行と最もよく相関する結果を得た。その進行過程では、腎循環の低下に起因する虚血性低酸素の関与が示唆された。 2)培養ヒト尿細管細胞の低酸素反応 尿細管間質病変の主座としての尿細管に注目して、低酸素環境(1% O2)でヒト近位尿細管上皮細胞を培養し、サイトカイン発現性を調べた。その結果、cDNAアレイ解析法では、低酸素刺激によりPAI-1とVEGFの有意な増加がみられた。これらのサイトカインについて、TNF-αによる炎症刺激反応をmRNAとタンパクレベルで調べたところPAI-1のみが両刺激により相乗的に増加反応を示し、VEGFはTNF-α刺激には反応しなかった。ケモカインについての検査では、MCP-1,オステオポンチン、IP-10は低酸素で有意に発現が低下していた。 3)低酸素飼育マウスの腎病理 低圧性低酸素状態(0.5気圧)で、マウスを飼育し、72時間後に腎臓を摘出し、病理所見を検討した。その結果、著明な近位尿細管上皮の腫大がみられ、低酸素感受性色素ピモニダゾール染色が腎皮質に新たに陽性であった。免疫染色では、同部でのPAI-1,VEGF, MCP-1の陽性所見が得られた。
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