研究概要 |
甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレセプター(TSH-R)に対する刺激型の抗体(TSAb)が、TSH-Rを介して甲状腺細胞を過剰に刺激し、甲状腺ホルモンの産生が増加するというのがバセドウ病の病因である。このTSAbがリンパ球にも発現しているとされるTSH-Rを介してTリンパ球を刺激し、産生されたサイトカインによりBリンパ球からの抗体(TSAbを含む)産生が促進されるため、バセドウ病はなかなか治らないのではないかとの仮説を考えた。昨年度、ヒト末梢血単核球をヒトリコンビナントTSH共に7日間培養し、上清中のIgG量を測定し、健常人血中レベルであるTSH 1μU/mLでは、IgGの産生増加は認められなかったが、原発性甲状腺機能低下症でもみられるレベルであるTSH1OμU/mLおよび100μU/mLでは、IgGの有意な産生増加を認めた。つぎにリンパ球の抗体産生に関連するサイトカイン産生におけるTSHの影響について検討したが、IL-4は検出感度(0.1pg/mL)以下であり、比較することが出来なかった。本年度はIL-13について検討したが、やはり検出感度(0.4pg/mL)以下であり、比較することが出来なかった。そこで末梢血単核球とTSHとの培養の最後の1日間PWMで刺激して、上清中のIgG、IL-4、IL-13を測定した。IgG産生量とIL-4産生量には相関がなく、IgG産生量とIL-13産生量には相関を認めた(r=0.64,p<0.O1)。以上より甲状腺刺激ホルモンは末梢血単核球のIL-13産生を増強し、抗体産生を増加させることが明らかになった。
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