研究課題
基盤研究(C)
・HO-1誘導能の評価法の確立と動脈硬化疾患との関連の検討HO-1の臨床評価を末梢血から分離した単核球を用いて行った。リンパ球分離後、これをヘムで4時間刺激して、その前後のHO-1のmRNAをリアルタイムPCR法で測定したところ、各個人内において再現性のある数値が得られた。また、HO-1発現に関係があると考えられているHO-1遺伝子上流のマイクロサテライト多型の診断法も確立した。そこで、HO-1発現能と遺伝子多型の冠動脈疾患との関連を検討するため、冠動脈造影検査の目的で入院した110名を対象にマイクロサテライト多型と単核球HO-1mRNAを測定した。HO-1mRNAの測定は再現性よくおこなわれ、その発現量の一部はマイクロサテライト多型で決定されることが明らかになった。また、HO-1mRNA量は冠動脈造影の結果を定量化した動脈硬化スコアと有意に正相関し、HO-1の発現量が低下した個体では動脈硬化が進展しやすい可能性が示唆された。・HO-1の誘導を制御する転写因子Bach1の役割を理解する。HO-1の発現を制御する最も重要な転写因子Bach1の機能についてはBach1ノックアウトマウスで検討した。Bach1はHO-1を抑制しているため、Bach1ノックアウトマウスではHO-1の発現が恒常的に増加していることを確認した。このマウスでは心筋虚血に対する組織耐性が向上しており、心筋梗塞後の心不全と大動脈縮窄による心肥大が著しく抑制されることをモデル実験で確認した。また動脈硬化も出るマウスとの交配実験で動脈硬化が起こりにくいことを明らかにした。これはHO-1が心血管疾患の進展に防御的に働くことを示唆し、Bach1の抑制でそのような心血管保護効果が期待できることを示唆している。
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