本研究の目的は、成人急性リンパ性白血病(adult ALL)を対象とし、prospectiveにMRDの定量を行ない、小児と同様の初期治療反応性と予後との関連があるかを明らかにし、MRDに基づいた層別化による新たな治療戦略の導入の可能性を調査することである。 平成17年度はこのため、症例の収集と初診検体の分析を行った。本研究は我が国における成人急性白血病多施設共同治療研究の代表的なグループであるJALSG(Japan Adult Leukemia Study Group)の付随研究の一つとして、症例を集積することとしていたが、さらに解析症例を増やすために、九州大学医学部関連病院を中心としたALL2002プロトコールに登録を行った症例も対象とした。 平成17年度、新規に登録があったのは、JALSGでは10例、九州大学ALL2002プロトコール参加施設からは17例であった。いずれの症例も、TCRγ、δ遺伝子、IgH、Igκ鎖遺伝子再構成について、multiplex-PCR法によりスクリーニングを行った。MRD検出に用いた遺伝子再構成は、TCRγ6例、IgH4例、TCRδ4例、Igκ3例であった。 研究開始から現在までに集積された症例数は58例で、このうちMRD定量可能な何らかのマーカーをもつものは全体の85%で、診断後3ヶ月までの治療開始早期にMRDが陰性化(測定値10^<-3>未満)した症例は15%であり、同じ方法を用いてこれまで検索してきた小児ALLと大差はなかった。 小児では早期MRD陰性化群では、陽性群と比較して予後良好であったが、成人についても同様の傾向が見られるかどうか、平成18年度以降は、さらに症例数を増やすと同時に、予後との相関を確認する必要がある。
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