サイクリンキナーゼインヒビターp21は、DNA損傷に即応して細胞周期を停止あるいは遅延させる能力を有し、条件によっては、アポトーシス進行に対し、促進的あるいは抑制的に機能することが報告されている。p21の機能は、リン酸化、蛋白分解酵素による切断、そして細胞内局在部位により異なる。p21の腫瘍細胞での存在様式の評価は、予後診断に有用な情報となる。p21は本来短寿命蛋白であり、DNA損傷後にサイクリンやCDKと結合・相互作用し抑制するためには、安定化する必要があり、その機序としてリン酸化や、他の結合蛋白による保護が挙げられる。我々はこれまでに、p21分子内のアミノ末端側の15-48アミノ酸領域が安定的な発現に必須であることを報告した。 最近、p21の安定化機構の一つとして、p21とWISp39とHSP90が相互作用する現象が報告された(Jascur T.Mol Cell.2005.17:237)ため、これまでに作成したP21 mutantと、WISp39との相互作用を解析した。解析のため、数種のシステムを試みた。1)p21とWISp39の真核細胞での発現プラスミドを同時にヒト細胞に導入し、p21の安定化を評価する。2)種々のp21 deletion mutantを恒常発現する細胞を作成し、WISp39発現プラスミドを導入し安定性を評価する。3)WISp39を恒常発現する細胞を作成し、p21 deletion mutant発現プラスミドを導入し安定性を評価する。4)大腸菌でHiSatag WISp39と蛋白を大量に合成し、p21はヒト細胞で合成したものを使用した、in vitro結合実験。上記実験を試みたところ、4)のin vitro結合実験でp21とWISp39の結合を検出し得た。しかし、実験条件によっては、明確でない場合もあり、現在その条件設定を精密に遂行している。
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