先に我々は、TNFαノックアウト(TNF-α-KO)マウスを用いた研究で、TNF-αがエンドトキシン血症時において、第一相の解毒機構を担うCYPに対しては保護的な役割を果たすが、第三相の解毒機構を担う薬物トランスポーターの一つであるP糖蛋白質に対しては保護作用を示さないことを明らかにした。本研究では、エンドトキシン誘発性腎機能低下に対するTNF-αの関与を明らかにすることを目的として、TNF-α-KOマウスを用いて、エンドトキシンによる薬物トランスポーターである有機アニオン輸送担体Oat3(Organic anion transporter 3)の発現量と機能の変化を分子機構論的に解明することを試みた。その結果、TNF-α-KOおよび野生型マウスのいずれの腎組織においても病理組織学的変化は認められなかったが、Oat3の発現量は野生型マウスと比較してTNF-α-KOマウスにおいて有意に低いことが明らかになった。エンドトキシンはいずれのマウスの腎組織に対しても病理組織学的変化を与えないことが明らかになった。また、エンドトキシン投与6時間後のOat3発現量はいずれのマウスにおいても有意に低下したが、24時間後には正常レベルまで回復した。一方、糸球体ろ過速度(GFR)はエンドトキシン投与6時間後、野生型マウスにおいて有意に低下したが、TNF-α-KOマウスにおいては低下しなかった。エンドトキシン投与24時間後のGFRはいずれのマウスにおいても変化が認められなかった。エンドトキシン投与6時間後および24時間後における6-メルカプトプリンの腎クリアランスは、野生型マウスにおいてそれぞれ70%および45%、TNF-α-KOマウスにおいてそれぞれ55%および45%低下した。この結果より、TNF-αはエンドトキシンによって誘発される腎障害に重要な役割を果たしているが、第三相解毒機構を担う薬物トランスポーターの一つであるOat3の発現には関与していないことが示唆された。
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