IgGレセプターIII(FcγRIII:CD16)には、NK細胞とマクロファージ(Mφ)に発現しているIIIa型と、好中球に発現しているIIIb型があり、両者とも細胞の活性化によって細胞表面から放出され、可溶型(sFcγRIII)として血漿中に存在している。そこでIIIa型およびMφ由来のIIIa型に特異的なモノクロナル抗体を作成し、血漿中のsFcγRIIIaおよびsFcγRIIIa^<Mφ>測定法を構築した。さらに、化学発光系を利用して、約80倍の高感度化に成功した。3種のsFcγRIIIs測定系の感度差より、正常プール血漿に含まれるsFcγRIIIaは大部分がNK細胞由来、総sFcγRIIIは大部分が好中球由来であった。 腎疾患においては糸球体や尿細管、間質の炎症により同部位に単球/Mφの湿潤が認められ、その発症や進展に関与すると報告されている。健常者尿中の3種のsFCγRIIIsを測定したところ、各々に比率が異なっていた。糖鎖の修飾の違いに因り排泄率が異なるとは考えにくいことから、健常者でも、好中球、単球/Mφの浸潤があるものと考えられた。一方、腎生検施行患者では血漿中、尿中ともにすべてのsFcγRIIIsが健常者と比して高値を示した。血漿総sFcγRIIIおよびsFcγRIIIaは軽度の増加であったが、sFcγRIIIa^<Mφ>は約3.6倍と患者の動脈硬化の亢進が考えられた。また、尿総sFcγRIIIはクレアチニン補正で約1.6倍の増加であったが、sFcγRIIIaは約4.3倍、sFcγRIIIa^<Mφ>は約9.6倍と桁違いの増加を示した。また、尿総sFCγRIIIが尿総蛋白濃度や糸球体濾過量推定値、クレアチニンクリアランスと極めて高い相関を示したのに対し、sFcγRIIIaおよびsFcγRIIIa^<Mφ>は何ら関連を示さず、NK細胞および単球/Mφの浸潤、活性化が示唆された。
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