研究概要 |
有明海周辺はVibrio vulnificus(Vv)感染症の多発地域である。久留米大学病院では2004年11月の冬季に,貝柱を生で摂食しVv感染症を発症し死亡した患者を経験したが,当時有明海では貝柱漁は禁漁期間中であった。我々はVv感染症の感染源として他に重要な因子はないかと考え,久留米市内の業務用流通店に搬入された輸入魚介類のVv汚染度調査を開始した。その結果,フィリピン産冷凍エビブラックタイガー100尾中9尾(9%),マダカスカル産冷凍エビブラックタイガー100尾中0尾(0%),インドネシア産冷凍エビブラックタイガー100尾中3尾(3%)より,cytotoxin hemolysin(vvh)遺伝子を保有した病原性の強いVvが検出され,Vv感染症の新たな感染源となることが示唆された。その他の輸入魚介類についてもVv汚染度調査を行ったが,調査材料のほとんどが加工された輸入魚介類(産地での内臓処理や加熱処理)であったためvvh遺伝子を保有したVvの検出ができなかった。上記の結果より,海外の産地で未加工のまま冷凍保存し日本に輸入された冷凍魚介類は,一定の割合で毒性の強いVvで汚染されていることが示唆された。 そこで,各種増菌培地(3%NaCl加ポリミキシン液体培地および3%NaCl加アルカリペプトン水)および各種分離培地(TCBS寒天培地およびCC(Cellobiose-Colistin)寒天培地)の組み合わせによる定量試験(5本法最確数(most probable number:MPN値))を実施することによって,加工された輸入魚介類中のVvを効率よく分離するための検査方法を検証している。また,各種増菌培地の培養ろ液中のvvh遺伝子測定し,vvh遺伝子陽性試験管数からMPN値を算定し,定量PCRの応用などについても検討している。
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