研究課題/領域番号 |
17590507
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
村田 勝敬 秋田大学, 医学部, 教授 (80157776)
|
研究分担者 |
石井 範子 秋田大学, 医学部, 教授 (10222944)
仲井 邦彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00291336)
苅田 香苗 帝京大学, 医学部, 講師 (40224711)
岩田 豊人 秋田大学, 医学部, 助手 (00321894)
嶽石 美和子 秋田大学, 医学部, 助手 (70375236)
|
キーワード | 環境有害因子 / 鉛 / カドミウム / 水銀 / 身体重心動揺 / 臨界濃度 / 非顕性影響 |
研究概要 |
環境中有害物質の高濃度ないし急性曝露による健康影響に関する知見は古くより集積されているが、低濃度長期曝露のヒトへの影響は必ずしも十分に解明されていない。本研究は、地域住民および職域労働者を対象として環境中の有害因子の低濃度慢性曝露による非顕性の神経系機能および腎機能影響を客観的方法で検討し、個々の有害因子の低濃度曝露による神経および腎機能への悪影響を起こし始める濃度(臨界濃度)を明らかにする。 (1)鉛の神経影響の解析と臨界濃度の推定 東北地方にある鉛再生工場では、鉛の作業環境管理が産業医の下で十分に行われているが、まだ過去の曝露により血中鉛濃度が50μg/dlを超える作業者が何人かいる。この事業所の作業者121名を対象として、鉛の特殊健康診断時に身体重心動揺の検査を実施した。これら検査成績および採血した血中鉛濃度(6〜89、平均40μg/dl)と健常対照群60名の身体重心動揺検査成績を用いて解析した。鉛作業者群の開眼前後方向を除く全ての重心動揺指標が対照群と比べ有意に大きかった。また前後方向のロンベルグ指数が鉛作業者群で有意に高かった。鉛作業者群の血中鉛濃度は開眼時の1-2Hzおよび2-4Hzの前後方向の揺れの大きさ、また閉眼時1-2Hzおよび2-4Hzの前後および左右方向の揺れの大きさと有意に関連した。さらに、身体重心動揺に影響する鉛の臨界濃度をベンチマークドース(BMD)法により推定すると、血中鉛濃度12.1〜17.3(平均14.4)μg/dlであった。以上より、鉛作業者の神経運動機能障害は、従来影響がないとされていた血中鉛濃度(30〜40 μg/dl)よりも低い濃度で現れ始めることが示された。また、鉛曝露による身体重心動揺の特徴は、閉眼時の高い周波数の前後方向の揺れであると考えられた。 (2)カドミウムの健康影響の解析 秋田県内には旧鉱山および旧精錬所が多数あり、このためこれらの近くにあった地域では「カドミ米」が出ていた。本研究ではこれらの地域に住む人々約60名(女性)の尿中カドミウム濃度、尿中水銀濃度、尿中α1-ミクログロブリン、β2-ミクログロブリン、N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)等を測定した。さらに、これらの人々より、毛髪および爪を採取し、併せて食事摂取頻度調査も実施した。次年度、これらのデータ解析を行う予定である。 (3)メチル水銀の神経影響の解析 メチル水銀中毒患者(水俣市の胎児性水俣病患者)14名を対象として、神経行動学的検査(身体重心動揺および前腕部ふるえ)、聴性脳幹誘発電位、心電図RR間隔変動の測定を実施した。次年度、同市における対照群の測定を行うことになっている。
|