研究概要 |
本研究では、環境化学物質が発がんのイニシエーター/プロモーターとなり得るか、また、その機序を解析した。プロシアニジンB2(PCN B2)は、ココア豆、ブドウの種子、リンゴの皮、松皮に含まれ、その抗酸化作用からがんや循環器疾患の予防への期待が持たれている。我々はPCN B2がイニシエーターを検討した。ヒト培養細胞においてglucose oxidaseから持続的に生成するH_2O_2による8-oxodGの生成をPCN B2は抑制し、抗酸化作用が示された。一方、高濃度のPCN B2で長時間処理すると、8-oxodGの有意な上昇が認められた。また、単離DNAを用いた実験で、金属イオンおよびH_2O_2存在下での8-oxodG生成量を検討したところ、Fe(II)およびH_2O_2存在下で生成する8-oxodGは、PCN B2の濃度依存的に抑制された。一方、Cu(II)存在下では8-oxodG生成は上昇し、H_2O_2の添加により著しく8-oxodG生成が増強した。また、電子スピン共鳴装置を用いてスピントラップ剤によりH_2O_2と金属イオンから生成する*OHをトラップし、PCN B2によるラジカル生成への影響を検討した。Fe(II)およびH_2O_2存在下で生じる*OHのシグナル強度はPCN B2を加えることにより減少した。これに対してCu(II)およびH_2O_2存在下で生じる*OHのシグナル強度はPCN B2を加えることにより増強した。PCN B2はB環に2カ所の水酸基およびC環3位に水酸基を持つ。B環のo-ジヒドロキシ構造(カテコール構造)は金属キレート作用に重要であり、抗酸化作用は鉄イオンのPCN B2によるキレートが関与すると考えられた。一方、Cu(II)ではPCN B2との酸化還元反応を介してラジカルが生成し、DNA損傷に寄与したと推定された(Free Radic.Biol.Med.39,1041-1O49,2005)。
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