研究概要 |
カーボンナノファイバー(CNF)やフラーレンは、炭素原子のみから構成されるナノ材料である。本研究では、CNFやフラーレンをラットの気管内に反復投与し、CNFやフラーレンの肺に及ぼす影響について検討した。CNFの試料調製に関し、CNF試料を硫酸/硝酸の混合酸で120℃にて表面を酸化処理し、水洗、ろ過、希釈、pH調整して作成し、蒸留水に単分散した懸濁液を用いた(CNF分散液)。フラーレン試料はフロンティアカーボン社の製品nanom mix(C_<60>約60%、C_<70>約25%、C_<84>他約15%、粒径約20μm)を蒸留水で希釈し、投与に供した。CNF投与群は1回投与量0.1mg/kg,0.5mg/kg,1.0mg/kgの3群を設定し、対照群には蒸留水(1回投与量1.0ml/kg)に投与した。各被験物質は2週間の間に5回投与した。フラーレン投与群は1回投与量1mg/kg,10mg/kg,20mg/kgの3群を設定し、対照群には0.8%TWEEN80/蒸留水(1回投与量1.0ml/kg)を投与した。各被験物質は2週間の間に5回投与した。最終投与の翌日に安楽死させ、肺を中心とした生体影響について検討した。その結果、CNFやフラーレン投与群では、CNFやフラーレンが肺胞腔内、肺胞中隔、細気管支周囲リンパ組織、細気管支腔内に塊状あるいはびまん性に沈着し、CNFやフラーレン沈着部位を中心に炎症細胞の集積が観察された。最高濃度投与群における肺の炎症性変化は低濃度群に比較して際立って重篤なものではなかったが、CNFやフラーレンの沈着は各投与群の肺門リンパ節においても認められた。これらの病理学的変化の程度は、CNFやフラーレンの投与量に依存していた。今回の実験より経気道性に曝露されたCNFやフラーレンは全身へ移行する可能性が示唆された。
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