研究概要 |
DDTの代謝物、p,p'-DDE(DDE)とパラジクロロベンゼン(DCB)の2種の有機汚染物質の複合汚染による妊娠、出産に対する影響と次世代の成熟後の個体に対する影響について検討した。10週齢のオス、メスのウイスターラットを交配し、妊娠ラットを作成した。作成した妊娠ラットをコントロール群、パラジクロロベンゼン(DCB)投与群、DDEとDCBの複合投与群の各3群に分け、コントロール群には通常飼料を、DCB群にはDCB(25ppm)を、DCB+DDE群にはDDE(125ppm)とDCB(25ppm)を混入した特殊飼料を、妊娠1日目より授乳期が終了する日(出産後21日)まで母ラットに自由摂取させ、その後の母ラットの妊娠、出産および誕生した仔ラットへの影響を検討した。誕生した仔ラットは、母ラットの授乳個体数による成長への影響を除くため、生後2日目に、一匹の母ラットに対し仔ラットをオス、メス各4匹ずつに調整した。仔ラットは生後21日目に離乳させ、その後すべての群において通常飼料を摂取させた。実験では、母ラットの妊娠、出産に対する影響および仔ラットの成長、発達を経時的に観察、検討した。仔ラットが成熟した段階で剖検を実施し、成熟後の個体の主要臓器への影響、生殖器への影響、血液中の各種のホルモン濃度などを検討した。周産期にこれらの有機汚染物質の曝露を受けた母ラットの妊娠、出産に対する影響は認められず、仔ラットでも出生時、奇形や外性器の異常は認められなかった。周産期のDCBへの曝露による仔ラットの成長や発達への影響は認められなかったが、メス仔ラットにおいて胸腺の自然退縮が遅延した。DCBによる胸腺への作用は、DDEの複合曝露により阻害された。また、DDEとDCBの複合的な曝露により、成熟後のメスにおいて卵巣重量の低下が認められ、雌の生殖機能に影響を与える可能性が示唆された。
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