研究課題/領域番号 |
17590518
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
青木 一雄 大分大学, 医学部, 助教授 (60201282)
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研究分担者 |
三角 順一 大分大学, 医学部, 教授 (40109658)
海老根 直之 大分大学, 医学部, 助手 (30404370)
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キーワード | ヘリコバクタ・ピロリ感染 / 胃がん / 慢性萎縮性胃炎 / 生活習慣 / ドミニカ共和国 |
研究概要 |
ドミニカ共和国での健康調査(上部消化管疾患健康調査)を平成18年1月17日(火);サンペドロデマコリス(San Pedro de Macoris)市、及び1月18日(水);サントドミンゴ(Santo Domingo)市の両市において、文書で説明し同意が得られたそれぞれ100名、計200名の対象者に対し実施した。調査で得られた血液は、現地にて遠心分離後血清サンプルとして冷凍保存のまま日本に持ち帰り、ヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)抗体、血清ペプシノゲンI、II値、血清ガストリン値を測定した。また、同時に実施したアンケート調査票のデータは、現地にてデータ入力及び確認を行い、本邦にて血液検査テータと統合し分析の用に供した。現在、アンケート調査票(対象者の属性(調査地域、性、年齢)、対象者の生活習慣(喫煙、アルコール飲酒、食習慣、食生活など)、生活環境、上部消化管疾患既往歴、及びそれら疾患に関係する自覚症状の有無など)とヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)感染及び慢性萎縮性胃炎(CAG)との関連性について疫学的に検討を加えているところであるが、これまで行った分析により、次のようなことが明らかになった。ドミニカ共和国の2地域(サンペドロデマコリス市、及びサントドミンゴ市))におけるヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)感染率は、20歳以上の男性、及び女性でそれぞれ、61.1%、及び64.7%であり、男女間でヘリコバクタ・ピロリ感染率に有意な差は認められなかった。一方、慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率は、男性;16.7%、及び女性;11.8%であり、ヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)感染率と同様、慢性萎縮性胃炎有病率においても男女間で有意な差は認められなかった。さらに、ヘリコバクタ・ピロリ感染に及ぼす対象者の喫煙習慣の影響についてであるが、女性の喫煙者のヘリコバクタ・ピロリ感染率(91.7%)は、女性の非喫煙者のそれ(60.3%)に比し有意に高く、女性においては喫煙がヘリコバクタ・ピロリ感染に何らかの影響を与えていることが示唆された。しかし、男性の喫煙者と非喫煙者間には、ヘリコバクタ・ピロリ感染率に有意な差は認められず、今後、性別及び喫煙習慣とヘリコバクタ・ピロリ感染との関連についてさらに詳細に検討を行う必要がある。なお、喫煙習慣と慢性萎縮性胃炎については、男性、女性ともに両群間で関連性が認められなかった。また、アルコール飲酒とヘリコバクタ・ピロリ感染及び慢性萎縮性胃炎有病率との関連性については、男性、及び女性ともにそれぞれの群間で有意な差は認められなかった。アンケート調査票で聞き取りを行った食生活や食習慣とヘリコバクタ・ピロリ感染、及び慢性萎縮性胃炎との関連性については、現在検討中である。今後、来年(平成18年)度実施予定の第2回目のドミニカ共和国での健康調査、及び過去に同国で実施した同様の健康調査(2001/2002年)、並びに今回のドミニカ共和国での調査と同様の方法で実施したタンザニアでの健康調査(2001年)などの諸データを加味して、熱帯地域における慢性萎縮性胃炎やヘリコバクタ・ピロリ感染に及ぼす生活習慣の影響を明らかにしたいと考えている。
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