研究課題/領域番号 |
17590518
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
青木 一雄 大分大学, 医学部, 助教授 (60201282)
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研究分担者 |
三角 順一 大分大学, 医学部, 教授 (40109658)
海老根 直之 大分大学, 医学部, 助手 (30404370)
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キーワード | ヘリコバクタ・ピロリ感染 / 胃がん / 慢性萎縮性胃炎 / 生活習慣 / ドミニカ共和国 |
研究概要 |
平成18年8月にドミニカ共和国のサントドミンゴ(Santo Domingo)市にある小・中学校において、文書で説明し同意が得られた小児を中心に278名に対して健康調査(上部消化管疾患健康調査)を実施した。調査で得られた血液は、現地にて遠心分離後、血清サンプルを冷凍保存したまま日本に持ち帰り、ヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)抗体、血清ペプシノゲンI、II値、血清ガストリン値を測定した。また、同時に実施したアンケート調査票のデータは、現地にてデータ入力及び確認を行い、本邦にて血液検査データと統合した後、分析の用た供した。アンケート調査票の諸因子(対象者の属性(調査地域、性、年齢)、対象者の生活習慣(喫煙、アルコール飲酒、食習慣、食生活など)、生活環境、上部消化管疾患既往歴、及びそれら疾患に関係する自覚症状の有無など)とヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)感染及び慢性萎縮性胃炎(CAG)との関連性について疫学的に検討を加えた。その結果、ドミニカ共和国のサントドミンゴ市における15歳未満の小児のヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)感染率は、0〜5歳、5〜10歳、及び10〜15歳でそれぞれ、32.3%、45.1%、及び56.0%であり、これらの加齢による感染率の増加は有意な上昇であった。一方、慢性萎縮性胃炎の有病率は、0〜5歳、5〜10歳、及び10〜15歳で、それぞれ20.0%、8.5%、及び15.6%と一定の傾向は認められなかった。なお、ヘリコバクタ・ピロリ感染率、及び慢性萎縮性胃炎ともに、男女間で有意な差は認められなかった。さらに、ヘリコバクタ・ピロリ感染、及び慢性萎縮性胃炎に関係する諸因子を抽出するため、これらを目的変数とし、性、年齢、血清ガストリン、喫煙状況、アルコール飲酒、及び同居家族の人数、などを説明変数とするロジスティック回帰分析を行い、ヘリコバクタ・ピロリ感染に関しては、性(男性に比較し女性ではリスクが低い。女性は、男性の0.595倍のリスクである)、年齢(1歳年齢が高くなるとリスクが1.032倍になる)、及びガストリン(ガストリン値が1mg/ml増加するとリスクが1.003倍になる。)などの因子が抽出され、生活習慣因子や生活環境因子である同居家族の人数は、ヘリコバクタ・ピロリ感染に影響を与えていなかった。一方、同様に、慢性萎縮性胃炎に関してもロジスティック回帰分析を実施したが、慢性萎縮性胃炎に影響を与えている因子は、血清ガストリン値のみであり、その他の因子は影響を与えていなかった。この結果は、慢性萎縮性胃炎や胃癌のスクリーニングに血清ペプシノゲン法に加え、血清ガストリン値を加味したスクリーニングした方が効率のより胃癌スクリーニングができる可能性を示唆するものであり、今後さらに検討を加えることにより、胃がんの二次予防に寄与することが期待される。
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