研究概要 |
動物を用いた呼吸器感作性試験法の開発と現場におけるリスク評価への応用を目的として本研究を遂行している. 初年度に既知の感作性物質によるアレルギー惹起試験法の検討の結果,それらの反応惹起の確認と感作性強度の評価の可能性を示唆する成績が得られたことより,本年度は,さらに他の既知の感作性物質を使い,その有用性を検討するとともに(1),サイトカイン解析による感作性の評価法の検討(2)を行った.(1)ヒトで喘息の発生報告のあるグルタールアルデヒド(GA)と皮膚感作性物質であるDNCBを試験物質として,惹起試験法を実施した.動物(マウス)の処置法は初年度と同様である.5回/週,3週間の気管内投与による感作処置のあと,惹起処置としての気管内投与48時間後に,気管支肺胞洗浄液(BALF)細胞分画,肺病理組織検索および血清IgE抗体の測定を実施した.その結果,GAにおいては肺における好酸球浸潤と気管支粘膜の分泌亢進像が認められ,アレルギー反応を確認することができた.一方,皮膚感作性物質であるDNCBにおいては,肺組織においては何ら炎症反応は認められず,惹起試験法としての有用性がさらに示唆された.(2)サイトカイン解析は,TDI, OVAおよびDNCB感作マウスを用いて,BALFの液成分と細胞成分を対象に,それぞれELISA法とフローサイトメトリによる細胞内サイトカインの測定を実施した.その結果,TDIあるいはOVA感作マウスでは,BALF中のサイトカインはTh2タイプのIL-4優位なパターンを示したが,DNCBマウスはそうでなかった.細胞内サイトカインにおいては,現在解析を進めているところであるが,ELSIAによるサイトカイン解析により感作性予知評価の有用性が期待される成果と考える.なお,(1)の実験については,研究協力者においても同実験を実施し,同様な結果を得ており,再現性の点でも検証されたと思われる.
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