| 研究概要 |
本研究の目的は院内感染起因菌として重要な腸球菌における消毒剤耐性に関与する遺伝子を同定し、それら耐性菌の疫学的特長を明らかにすることである。研究対象として、1997年から2004年までの間および2006年以降に札幌医科大学附属病院において分離された臨床分離株約1000株、2003年に中部地方の大学病院で分離された39株、海外の共同研究機関で分離された78株を対象とした。GenBankに登録されている腸球菌の遺伝子配列より消毒剤耐性、すなわち多剤排出蛋白をコードすると考えられる遺伝子を検索し、E.faecalisの多剤排出蛋白EfrB, EmeA, QacH、E.faeciumのABCトランスポーターEMrA遺伝子を選び、これらをPCRによって検出した。調査したE.faecalis 60株はすべてEfrB, EmeA遺伝子を保有しており、E.faecium30株はすべてEMrA遺伝子が陽性であった。またE.gallinarum全7株がEmeA遺伝子陽性、E.hirae全3株がEMrA遺伝子陽性、E.durans4株中2株でEMrA遺伝子が陽性であった。その他の菌種(E.avium, E.raffinosus, E.casseliflavus, E.mundtii)ではいずれの遺伝子も検出されず、またqacHはいずれの菌種にも検出されなかった。現在消毒剤への耐性レベルを測定しており、耐性度の違う菌株間、異なる菌種間での消毒剤耐性遺伝子の配列の違いを解析する予定である。
上記の多剤排出蛋白遺伝子の検出と並行して、全調査対象菌株に対しアミノグリコシド耐性遺伝子4種の分布状況を調べ、一部の菌株についてテトラサイクリン耐性遺伝子、マクロライド耐性遺伝子、バンコマイシン耐性遺伝子の検出を行った。その結果、我々が初めて検出し2005年に報告したアミノグリコシド修飾酵素遺伝子aph(2")-Ie(米国で報告されたaph(2")-Idに類似する)が調べられたE.faeciumのうち8株に存在すること、E.casseliflavusのvanCに、従来より知られるvanC2/3とは異なる亜型が存在することが明らかとなった。
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