1 ヒトp53蛋白セリン15残基をアラニンに置換した遺伝子(S15A)および野生型p53遺伝子をA549細胞に導入し、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO_3)曝露後のp53-DNA結合活性とDNA断片化(細胞質ヌクレオゾーム)を測定した。その結果、S15A変異型p53導入細胞では、野生型導入細胞に比し、NaVO_3曝露によるp53-DNA結合活性上昇とDNA断片化は、各々、17%と15%の低下であり、バナジウム曝露によるp53蛋白セリン15リン酸化は、p53転写活性化およびDNA断片化において部分的な関与をしていると考えられた。 2 NaVO_3曝露A549細胞において、過酸化水素の増加、および同消去剤であるカタラーゼ処理によるその低下が蛍光顕微鏡下に認められた。一方、過酸化水素処理は、A549細胞のp53蛋白セリン15残基のリン酸化を生じた。しかしながら、カタラーゼや抗酸化剤N-acetylcysteinの処理では、NaVO_3曝露によるp53セリン15のリン酸化は明らかには抑制されなかった。従って、バナジウム曝露によるp53セリン15のリン酸化における活性酸素種の関与は少ないものと考えられた。 3 NaVO_3曝露後のセリンおよびチロシン残基リン酸化型蛋白レベルを各リン酸化認識抗体を用いたイムノブロット法を用いて測定した結果、著しいチロシン残基リン酸化蛋白の増加は認められたが、セリン残基リン酸化の増加は明かではなかった。従って、バナジウム曝露によるp53蛋白のセリン15部位のリン酸化が非特異的な現象ではないと考えられた。 4 同じく経気道曝露されうる亜鉛の曝露により、NaVO_3と同様なA549細胞のp53蛋白セリン15残基のリン酸化が認められ、wortmannin処理により抑制された。また、カドミウム曝露により、転写制御因子STATのセリン727部位リン酸化も認めた。
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