研究概要 |
アクリルアミド(1〜5mM)は、ヒト神経芽腫細胞(SH-SY5Y)の生存性(WST-8ならびにLDH漏出を指標として評価)を、用量に従い低下させた。Caspase-3活性およびsubG1 phase細胞も3mMまでアクリルアミドの用量に応じ上昇した。ただし、これらは4,5mMではむしろ3mMの場合よりも低かった。一方、全Caspaseの阻害剤であるZ-VAD-fmkは、アクリルアミドの細胞毒性を抑制した。extracellular signal-regulated protein kinase (ERK) kinaseの特異的阻害剤であるUO126は、Caspase-3活性およびsubG1 phaseの細胞増加いずれも抑制した。これらから、ヒト神経芽腫細胞(SH-SY5Y)に対するアクリルアミドの細胞毒性発現過程には、アポトーシスが関与していること、さらにこれには、MAPK (mitogen-activated protein kinase)特にERKが関与していることが考えられた。ただし、高濃度(4,5mM)の場合、アポトーシス以外の機構も関与している可能性が考えられた。これまで、アクリルアミド中毒ラットの神経組織において、bcl-2およびbaxレベルの変化とともにCaspase-3の不活性型アイソフォームの増加を認めたとの報告がある。しかし、アポトーシスあるいはCaspase-3活性化の直接的証拠はなかった。今回の結果はアクリルアミドが神経系細胞においてCaspase-3活性化を伴うアポトーシスを惹起しうることを初めて明瞭に示したものと考えられる。
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