研究概要 |
ヒト神経芽腫細胞(SH-SY5Y)にアクリルアミド(0.5〜5mM)を暴露し、p53ならびにMAPK、すなわちextracellular signal-regulated protein kinase(ERK)、p38、c-Jun NH_2-terminal kinase(JNK)のリン酸化を免疫沈降およびWestern blottingにより調べた。細胞毒性はトリパンブルー排除およびLDH漏出を指標として評価した。その結果、SH-SY5Y細胞において、アクリルアミドが、p53蛋白リン酸化を促進すること、またこれに、MAPKとPIKK(phosphatidylinositol 3-kinase-related kinase)経路が関与することを示唆する結果が得られた。このうち、特にERK経路が、p53蛋白リン酸化と細胞毒性発現に重要と考えられた。 さらに、アクリルアミド(1〜5 mM)は、SH-SY5Y細胞の生存性(WST-8ならびにLDH漏出を指標として評価)を、用量に従い低下させた。Caspase-3活性およびsubG1 phase細胞も3mMまでアクリルアミドの用量に応じ上昇した。ただし、これらは4,5mMではむしろ3mMの場合よりも低かった。一方、全Caspaseの阻害剤であるZ-VAD-fmkは、アクリルアミドの細胞毒性を抑制した。ERK kinaseの特異的阻害剤であるU0126は、Caspase-3活性およびsubG1 phaseの細胞増加いずれも抑制した。これらから、アクリルアミドの細胞毒性発現過程には、アポトーシスが関与していること、さらにこれには、MAPK特にERKが関与していることが考えられた。
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