研究概要 |
【目的】ADHDの原因として環境ホルモンの影響が指摘されている。なかでもPCBやダイオキシンは甲状腺ホルモンを阻害し、脳の発達障害を引き起こす。そこで親ラットに甲状腺ホルモン阻害剤を投与し、仔ラットに注意障害や衝動性が生じるか検討した。 【方法】メチマゾールを飲料水に混入し、妊娠15日〜出産後21日まで親ラットに投与した。濃度は0.02%(高濃度)、0.002%(低濃度)、0%(統制群)であった。仔ラットを21日目に離乳させ、注意障害を検証するため、オペラント実験箱でターゲット検出訓練を行った。ITI10秒の後にターゲット(光)が点灯し、制限時間内にレバーを押すとエサを与えた。制限時間は16,8,4秒であった。次にいつターゲットが点灯するか予測できないように、ITIを10,17.4,30,52.5秒でランダムに変化させた。衝動性を検証するために、オペラント箱でDRL20秒の訓練を行った。この訓練では、直前の反応から20秒以上経過した反応にのみエサを与えた。 【結果と考察】 (1)高濃度群はオス、メスとも正反応が減少した。正反応の減少は制限時間が短いほど、ITIが短いほど顕著であった。 (2)制限時間が短い場合、ターゲットに素早く反応しなければならない。ITIが短い場合、次のターゲットがすぐに提示される。高濃度群は新たなターゲットに備えたり、素早く反応したりすることが困難であった。原因として注意障害が考えられる。 (3)高濃度群のオスとメスは20秒待つことが出来ず、行動を抑制できなかった。低濃度群のオスとメスにも行動抑制の障害が見られたが、最終的には統制群と同等の成績に達した。 (4)行動抑制の障害は、衝動性が高まったためと考えられる。
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