研究概要 |
第一に、糖尿病予防の個別健康教育における面接回数の多寡による介入効果の差を検討した。対象は一般地域住民で、中年期の男女25名である。居住地区を単位として面接回数の多い(月に2回:n=11)強力介入群と通常の面接回数である(月に1回:n=14)通常介入群とに無作為に割り付けた。6ヶ月間の個別健康教育の結果、体重は強力介入群で-3.5kg(p<0.0001)、通常介入群で-1.8kg(p=0.02)の変化がみられ、両群の変化の差は、-2.Okg(95%信頼区間;-4.0,-0.05)で統計学的に有意であった。 次に、糖尿病予防教室に参加した肥満または耐糖能異常のある中年期成人37名を対象に、β-3アドレナリン受容体遺伝子多型を解析し、同教室における個別健康教育の効果を評価した。変異ありが12名、変異なしが25名であった。変異の有無と介入前の各因子との関連を評価した結果、体重、空腹時血糖値などいずれの指標も、遺伝子多型とは関連していなかった。また、遺伝子変異の有無と介入前後の各因子の変化との関連を評価した結果、体重、空腹時血糖値などのいずれの変化量も、遺伝子多型とは関連していなかった。介入前後の体重の変化は、変異あり群で平均-2.5kg(95%信頼区間;-3.6,-1.3)、変異なし群で平均-1.9kg(95%信頼区間;-2.7,-1.1)で、統計学的に有意な差はみられなかった。同様に、空腹時血糖値でも、-3.9mg/dl(95%信頼区間;-8.4,0.6)、-0.2mg/dl(95%信頼区間;-3.3,2.9)と有意な差はみられなかった。 本研究結果から、糖尿病予防の個別健康教育の効果は、β-3アドレナリン受容体遺伝子多型の変異の有無に影響されず、面接回数が多いというより強力な介入を行うことで、より大きな効果を期待できることが明らかとなった。
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