【目的】飲酒と動脈硬化のリスク要因との関連性におよぼす性および年齢の影響を検討した。【方法】20〜69歳までの職場での定期健診受診者(男女計約6.5万人)のデータを用いた。一日あたりの平均飲酒量により、対象者を非飲酒群、少量飲酒群(一日当たり30g未満)、多量飲酒群(一日当たり30g以上)の3群に分類した。血圧、BMI(body mass index)、血中脂質(総コレステロール、HDLコレステロール、動脈硬化指数)と飲酒との関連性について性・年齢別に検討した。【成績】BMIは男性では飲酒による影響を受けなかったが、女性では20〜50歳代で非飲酒群に比べて少量飲酒群で有意に低かった。男性の収縮期および拡張期血圧はいずれの年齢でも多量飲酒群では非飲酒群に比べ有意に高かったが、少量飲酒群では40歳代以降においてのみ非飲酒群に比べ有意に高かった。一方、女性の収縮期血圧は少量飲酒群では非飲酒群と有意差はなかったが、40歳代および50歳代の多量飲酒群では非飲酒群に比べて有意に高く、60歳代でも同様の傾向を認めるものの、20歳代および30歳代では多量飲酒群と非飲酒群との間に有意差はみられなかった。また女性の拡張期血圧はすべての年齢群で非飲酒群に比べて多量飲酒群で高かったが、少量飲酒群では非飲酒群と変わらなかった。血中総コレステロールは男性では20歳代を除きいずれの年齢でも飲酒群で低下傾向を示したが、20歳代では飲酒により逆に上昇傾向を示したのに対して、女性では50歳代までは非飲酒群に比べて飲酒群で低い傾向を示したが、60歳代では逆に飲酒群で増加傾向を示した。男女ともいずれの年齢群においても飲酒量の増加とともにHDLコレステロールは増加傾向を、また動脈硬化指数は減少傾向を示した。【結語】飲酒による血圧上昇作用は男女とも高年においてより顕著であるのに対して、飲酒によるHDLコレステロール増加作用は年齢の影響を受けないことが示唆された。
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