平成17年度の研究では、職場での定期健診受診者(20〜69歳、男女計約6.5万人)のデータを用いて、飲酒と動脈硬化のリスク要因との関連性におよぼす性および年齢の影響を検討した結果、以下の性差が判明した。1)BMI(bodymassindex)は男性では飲酒による影響を受けなかったが、女性では20〜50歳代で非飲酒群に比べて少量飲酒群(一日当たり30g未満)で有意に低かった。2)男性の収縮期血圧はいずれの年齢でも多量飲酒群(一日当たり30g以上)では非飲酒群に比べ有意に高かったが、女性の収縮期血圧は40歳代および50歳代の多量飲酒群では非飲酒群に比べて有意に高く、60歳代でも同様の傾向を認めるものの、20歳代および30歳代では多量飲酒群と非飲酒群との間に有意差はみられなかった。3)血中総コレステロールは男性では20歳代を除きいずれの年齢でも飲酒群で低下傾向を示したが、20歳代では飲酒により逆に上昇傾向を示したのに対して、女性では50歳代までは非飲酒群に比べて飲酒群で低い傾向を示したが、60歳代では逆に飲酒群で増加傾向を示した。このように肥満、血中脂質、血圧などの動脈硬化のリスク要因への飲酒の影響に性差が存在することが明らかになった。 平成18年度の研究では、山形県内の産業事業所において健康診断の前に血中脂質および肥満などの生活習慣に関する指導を中高年女性従業員に対して個別に面談して行った。その結果、産業衛生現場での生活習慣に関する面談指導は肥満や臨床検査データおよび運動習慣の改善に有効であるが、その効果は肥満の程度により異なり、高度肥満者に対しての指導の効果は少ない一方、肥満の改善がなくても運動習慣の増加が検査所見の改善につながる可能性が示唆された。したがって、生活習慣病予防のためには肥満の程度に応じて内容を工夫した個人指導が必要であることが判明した。
|