空気中ウイルスの検出にも応用が試みられているnested RT-PCR法を用いた空中浮遊インフルエンザウイルスの検出法の確立をめざしたが、これまでのところ、安定して空中のインフルエンザウイルスを検出できる条件が得られなかった。原因としては、ウイルスの捕集方法に関する問題、PCRの感度の問題などが考えられた。したがって、大都市公共空間における空中浮遊インフルエンザウイルスの動態、インフルエンザウイルスの検出状況と浮遊粒子状物質、浮遊細菌、検出される細菌種、その他気温、湿度、人の密度、換気条件といった指標との関連については十分な統計学的検証をすることができなかった。しかしながら、大都市地下公共空間(公共地下通路、地下鉄車両内)において、浮遊粒子状物質および空気中浮遊細菌の動態を明らかにした。通行者/乗客数、粒径5.0μmの浮遊粒子状物質数と空気中浮遊細菌間に正の相関が認められることを明らかにした。空気中浮遊細菌の同定を行った結果、前回の調査同様、空気中の浮遊細菌はグラム陽性菌がやや優勢であると考えられ、属レベルでStaphylococcus属、Micrococcus属、Pseudomonas属が優位であった。病原性が示唆される黄色ブドウ球菌、連鎖球菌も同定された。空気中浮遊ウイルスに関する文献調査と上記結果より、インフルエンザ流行期には、粒径5.0μmの浮遊粒子状物質数を空中浮遊インフルエンザウイルスのリスク指標として使用できる可能性が示唆された。
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