研究課題
転倒を繰り返す高齢者はうつ傾向にあり、転倒回数とうつスコアの相関がみとめられることが報告されているが、本邦高齢者を対象とした検討はきわめてすくない。また、転倒を繰り返す群と繰り返さない群の比較で、年齢やActivities of Daily Living(ADL)に差がなかったとされ、この点についての再検討は重要である。高知県T町在住の地域在住高齢者1261名(男529名、女732名、平均年齢75.4)を対象に、Geriatric Depression Scale (GDS-15)をもちいて「うつ」スクリーングを実施するとともに、過去1年間の転倒の既往を質問紙法により評価した。また、ADL、老研式活動能力指標、Quality of Life(QOL)評価を行うとともに、転倒スケール(21点満点)による転倒リスク評価もおこなった。対象者を転倒歴のあるものと、ないものの2群にわけて、うつ傾向との関連と相関について検討した。対象者の31.6%(399名)が過去1年間に1回以上転倒したことがあった。転倒歴のあるものは、転倒歴のないものにくらべて有意にGDS-15スコアが高く(6.5vs4.3、 P<.001)、10点以上のうつ傾向をもつものも有意に多かった(26.8%vs11.6%、P<.001)。また、転倒歴のあるものは年齢が有意に高く(76.9vs74.7、P<.001)、年齢補正しても基本的ADL、老研式活動能力指標、QOLの各スコアが有意にひくかった。転倒既往のある群において転倒回数とGDS-15スコアは弱い相関をみとめ(rs=0.17、P=.002)、転倒スケールとGDS-15においても相関を認めた(rs=0.53、P<.001)。転倒リスク軽減がうつ予防につながるか否かについては、今後のさらなる縦断的検討が必要である。
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