研究概要 |
保険学における収支相等の原則と給付・反対給付均等の原則から介護保険料と介護給付の経済と財政の将来予測をする。将来確実となる人口動態の予測値等から,介護保険料ならびに介護給付費の経済と財政の詳細なる保険学分析をする。 介護保険料と被保険者数の積算と介護給付費総額とが均衡する収支相等の原則から保険学分析を予測する。介護給付費実態調査一覧(厚生労働省)と将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所H14年1月)に基づき,第IからII期(H13〜17年)内と第II期(H15〜17年)内における介護保険の給付費総額の動向から経済と財政の分析を行った。将来推計人口予測から第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40〜64歳)の予測数と比率を求める。介護保険の被保険者は介護給付額総額の半額を負担するので,第1号被保険者数の割合から,第1号被保険料を算定した。 介護給費総額と経過月数との関係を回帰分析により曲線推定(統計解析ツールSPSS)を行った。第I期からII期までの適合度を判定すると,線形回帰が適合度R^2=0.93(Sig.T=0.0,Y=a+bt),次いでS曲線が適合度R^2=0.93(Sig.T=0.0,Y=e^<(a+b/t)>)となり,介護給付費総額の統計予測として線形回帰直線を使用した。S曲線との適合度も高いために,介護給付費総額は,介護保険が開始された当初は増大が速くなるも,十分大きくなると次第に鈍く頭打ちになっている傾向も示唆された。 介護保険開始時(第I期)を基点とする介護給付費の将来見通しの方法や厚生労働省老健局による試算方法では,介護給付費と介護保険料が現状推移より,急騰する試算となっている。その試算の結果では,介護保険料の高騰による現状の介護報酬等と要介護等認定者の削減と抑制を強く求める根拠となる。第II期内から介護給付費にはすでに抑制がかかっており,本来ならば現時点の第II期内を基点として将来試算をすべきである。2006年度からの新介護保険制度による第III期でさらなる抑制がされると,第I期の基点から試算された経済財政試算と比較すると,上記のごとく介護保険事業期ごとに介護給付費が数百億円から1兆円以上の余剰の上乗せが想定される。次第に大規模な社会保険になると想定されるため,将来の社会保障の経済と財政再建のためには,社会保険と社会福祉の経済財政の試算を再検証する必要がある。
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