目的 介護保険制度では、要介護認定による施設介護サービスの介護時間である量的介護評価が重視されている。量的介護評価の介護時間で要介護認定するだけでなく、介護モデルに基づく身体介護・認知症介護・介護負担に対する質的介護評価である「総合介護認定」を開発する研究をした。 方法 要介護認定改訂版(2003年版)の方式に基づき、介護老人福祉施設における全介護職員13名と要介護者68名を対象とした24時間の自計式タイムスタディ調査と、さらに介護職員3名対調査員3名に対する1分間タイムスタディの他計式調査法にて、調査員と介護職員の認知症介護と介護負担に対する介護評価基準を同期しながら記録した。統計解析はSPSS 9.0 for WindowsでT検定とPearsonの相関係数、Amos7.0で変数間の因果関係をパス図で解析した。 結果 要介護度が重度になるほど自計式の介護時間が増加傾向にあり、各要介護度と介護時間の統計的有意差を認め、その相関係数は0.444であった。要介護度別に有意差があった介護サービス業務は食事と移動移乗体位変換であった。パス図で要介護度には食事と移動移乗体位変換が直接関与し、日常生活自立度では障害老人は移動移乗体位変換、認知症高齢者は食事を介する間接関与が示唆された。他計式の介護時間の総数(n=540)における介護職員と調査員の認知症介護の有無の一致係数はKendall W=0.60(p<0.01)で、介護負担の有無の一致係数はKendall W=0.37(p<0.01)で、中等度前後の一致性が認められた。 結論 日常生活活動(ADL)介護サービスは、その大部分が身体介護サービスであるため、要介護度が重度になると身体介護の介護時間が多くなる傾向がある。要介護認定のケアコードが身体介護サービスを中心としたADLケアコードになっているために、認知症介護や介護負担が要介護度に反映されにくい。その介護評価基準によるタイムスタディで(1)認知症介護は介護負担に影響を与える(2)認知症介護は第三者でも捉えられる可能性がある(3)認知症介護と介護負担を捉えていく必要があることが示唆された。介護時間による量的介護評価の要介護認定から、身体介護・認知症介護・介護負担に基づく質的介護評価による総合要介護認定の総合化が求められる。
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