これまでに測定、データ入力が終了した800人の成人男性についての健康診断成績の内、飲酒、喫煙量と血圧および血清クレアチニンから算定される推定クレアチニン・クリアランス値の関係を解析した。その結果、以下のような成績が得られた。 1)飲酒量の増加は血圧値の上昇と強く関連し、喫煙量の増加は血圧値の低下と弱いながら有意の関連性を示し、従来の報告と一致した。 2)飲酒量および喫煙量の増大がいずれも血清クレアチニンの低下および推定クレアチニン・クリアランス値の増大と関連した。この集団では飲酒量、喫煙量のいずれもBMIと有意の関連を示さなかったので、飲酒者や喫煙者の血清クレアチニン低値は筋肉量減少によるクレアチニン生成低下でなく、クレアチンニン尿中排泄増加、すなわちクレアチニン・クリアランスの増大を反映したものと考えられた。 3)重回帰分析の結果、血清クレアチニン低下とクレアチニン・クリアランス上昇は喫煙量と空腹時の血清インスリン値にもっとも強く関連することが示された。 4)喫煙者においては、クレアチニン・クリアランスの増加が血圧値の上昇と有意の関連性を示したが、非喫煙者ではそのような関連性は明らかでなかった。 今後、クレアチニン・クリアランスの増加を示す喫煙者での血圧上昇に、腎糸球体でのhyperfiltrationが関与しているかどうかを解明する予定である。
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