研究概要 |
前年度の検討においてラット腹部への鍼通電刺激時に正常及び糖尿病モデルのいずれにおいても耐糖能が改善しインスリン感受性が増加した結果を受けて、今年度は同様の刺激を継続的に繰り返した場合のインスリン感受性及び耐糖能の変化について検討した。 1.糖尿病モデルラットのインスリン感受性に及ぼす継続的鍼通電刺激の効果について 糖尿病自然発症モデルであるGKラットを、生後6週齢の時点から1週間飼育した後に、隔日で3回、麻酔下で腹部鍼通電刺激(15Hz,10mA)を行い最終刺激日から3日目に、通電刺激を行わない状態でHyperinsulinemic euglycemic clamp(インスリン注入率5mU/kg/min、クランプレベル100mg/dl)によりインスリン感受性を測定した。対照は麻酔のみ行う無刺激群とした。腹部鍼通電刺激直後の随時血糖値は3回とも顕著に降下したが、毎回の刺激前値は対照群と差を認めなかった。継続刺激終了後のインスリン感受性は、腹部鍼通電群で対照群より若干高い傾向を認めたが、統計学的には有意差を認めなかった。 2.糖尿病モデルラットの耐糖能に及ぼす継続的鍼通電刺激の効果について 上記1.と同様GKラットを飼育し刺激した後に、経静脈糖負荷試験(0.5g glucose/kg BW)を行い、継続的腹部鍼通電刺激が耐糖能に及ぼす効果を検討した。実験1と同様に毎回の腹部鍼通電刺激直後の血糖値は対照群と比較して顕著に降下したが、3回の刺激終了後3日目に無刺激状態で測定した耐糖能は、血糖変動及びインスリン分泌反応のいずれも対照群との差異を認めなかった。 今回の結果から、腹部鍼通電刺激により惹起されるインスリン感受性および耐糖能の改善効果を持続させるためには、対照モデル動物、刺激部位、通電条件などの要因を吟味した上でさらなる検討が必要であると考えられた。
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