研究概要 |
本研究は、医療と雇用の両分野の政策が関わる労働衛生分野において、労働者の健康情報の保護と活用の均衡を図るための指針を示すことを目的とした。 2005年5月〜8月に、全国の主要6都市で事業場の健康管理担当者423人を対象に、個人情報保護法の全面施行への対応状況を調査した(回答率84%)。2005年12月に、日本産業衛生学会の指導医・専門医363人を対象に、健康情報の取扱い方に関する意識と実態を調査した(回答率60%)。2006年11月〜2007年1月に、専門医210人(回答率47%)、衛生管理者2,059人(回答率35%)、労働組合1安全衛生担当者144人(回答率27%)を対象に、労働安全衛生法や高齢者医療確保法に基づく健診項目に関する意識と実態を調査した。一方、専属産業医経験のある医師12人から労働者の健康情報の取扱いに関する事例を収集し、5人の専門家による5回の検討会を実施して課題と対処法を整理した。 その結果、(1)産業医が非常勤の場合は衛生管理者に健康情報の取扱いへの関与が期待されていること、(2)健康情報の種類によって活用と保護の均衡についての意識が異なること、(3)個人情報の保護に対する意識に比べて具体的な対策の実施率が低いことなどが明らかとなった。また、就業上の措置を実施する根拠となった検査項目は血圧が88%と最多で、体格の指標は10%未満であった。事例は、取得15、利用27、提供14、委託・受託4、保管10、破棄2、開示2、教育1の75の類型に分類され、健康と就業を両立させるために健康情報の保護と活用の均衡を図る方法が立案できた。 これらの成果に基づき、職場における労働者の健康情報の保護と活用のための指針をまとめ、小冊子「職場と健康情報」((財)産業医学振興財団)として公表し、事業場で産業保健専門職などが活用するマニュアルとして「産業保健版個人情報の保護と活用の手引き」((株)法研)を出版した。
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