研究課題
代謝症候群は内臓型肥満に伴い高血圧、高脂血症、糖尿病などの多彩な病態を引き起こす症候群である。安静時代謝の高低は代謝性疾患の成因に大きく関与しているが、一般住民を対象とした安静時代謝量と代謝症候群との関係についての大規模研究は、国内においてみられない。そこで、一般住民を対象に安静時代謝量を測定した。受診者を診察ベッドに臥床し安静状態にさせる(15分間)。安静臥床の後、呼気マスクを受診者の口と鼻が完全に覆われるように装着させ、Cortex社メータマックス3(呼気ガス分析装置)で、breath by breathで呼気ガスを3分間モニターした。初年度は、男性1664名、女性1915名に対して、安静時代謝量の性年代別平均値、および各危険因子との偏相関係数を求めた。性年代別の安静時代謝の平均値±標準偏差は、30歳代から80歳代の順に、男性で1452±139kcal/日、1410±216kcal/日、1386±173kcal/日、1305±169kcal/日、1218±165kcal/日、1165±171kcal/日、女性で1115±146kcal/日、1112±156kcal/日、1107±160kcal/日、1069±157kcal/日、1030±153kcal/日、966±152kcal/日であった。また、体重当たりの安静時代謝量と各危険因子との年齢調整偏相関係数は、男女の順に、収縮期血圧で-0.100(p<0.0001)、-0.059(p=0.0104)、拡張期血圧で-0.132(p<0.0001)、-0.085(p=0.0002)、総コレステロールで-0.058(p=0.017)、-0.037(p=0.107)、HDLコレステロールで0.160(p<0.0001)、0.1370(p<0.0001)、中性脂肪で-0.087(p=0.0004)、-0.102(p<0.0001)、尿酸で-0.118(p<0.0001)、-0.099(p<0.0001)、ウェストで-0.402(p<0.0001)、-0.348(p<0.0001)であった。以上のことから、男女共に収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、中性脂肪、尿酸、ウェストと体重当たりの安静時代謝量とに逆相関がみられ、HDLコレステロールと体重当たりの安静時代謝量とに正相関が見られた。次年度は、メタボリックシンドロームと安静時代謝量および循環器病のリスクファクターとの関係について解析を進めていく。
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