研究概要 |
安静時代謝の高低は代謝性疾患の成因に大きく関与しているが、一般住民を対象とした安静時代謝量と代謝症候群との関係についての大規模研究は、国内においてみられない。そこで、一般住民を対象に安静時代謝量を測定した。受診者を診察ベッドに仰臥位で安静状態にさせた(15分間)後、呼気マスクを受診者の口と鼻が完全に覆われるように装着させ、Cortex社メータマックス3(呼気ガス分析装置)で、breath by breathで呼気ガスを3分間モニターした。男性1676名、女性1926名に対して、安静時代謝量の性年代別平均値、および各危険因子との偏相関係数を求めた。性年代別の安静時代謝の平均値±標準偏差は、30歳代から80歳代の順に、男性で1452±139kcal/日、1410±216kcal/日、1386±173kcal/日、1305±169kcal/日、1218±165kcal/日、1165±171kcal/日、女性で1115±146kcal/日、1112±156kcal/日、1107±160kcal/日、1069±157kcal/日、1030±153kcal/日、960±152kcal/日であった。また、体重当たりの安静時代謝量と各危険因子との年齢調整偏相関係数は、男女の順に、収縮期血圧で-0.105(p<0.001)、-0.065(p=0.005)、拡張期血圧で-0.132(p<0.001),-0.089(p<0.001)、総コレステロールで-0.061(p=0.017)、-0.033(p=0.157)、HDLコレステロールで0.165(p<0.001)、0.136(p<0.001)、中性脂訪で-0.097(p<0.001)、-0.101(p<0.001)、尿酸で-0.120(p<0.001)、-0.100(p<0.001)、ウェストで-0.401(p<0.001)、-0.345(p<0.001)、レプチンで-0.202(p<0.001)、-0.310(p<0.001)、アディポネクチンで0.152(p<0.001)、0.135(p<0.001)であった。メタボリックシンドローム(日本の診断基準)の頻度は30歳代から80歳代の順に男性で14.3%,16.8%,23.7%,28.2%,28.0%,22.4%、女性で0%,0.5%,6.7%,10.0%,14.0%,16.3%であった。メタボリックシンドロームの構成要素別(0-4の順)に安静時代謝の平均値±SEは男性で21.5±0.1kcal/kg日、20.7±0.1kcal/kg日、20.0±0.1kcal/kg日、19.8±0.1kcal/kg日、19.5±0.2kcal/kg日、女性で21.4±0.1kcal/kg日、20.8±0.1kcal/kg日、20.0±0.1kcal/kg日、19.5±0.2kcal/kg日、19.5±0.4kcal/kg日であった(共にp<0.001)。メタボリックシンドロームの各構成要素の所見の有無別(なし、ありの順)に安静時代謝の平均値±SEは、内臓肥満で男性21.1±0.1、19.8±0.1、女性21.0±0.1、19.5±0.1、血圧高値で男性20.6±0.1、20.2±0.1、女性20.9±0.1、20.5±0.1、脂質異常で男性20.6±0.1、20.0、女性20.9±0.1、20.2±0.1、血糖高値で男性20.5±0.1、20.0±0.1、女性20.8±0.1、20.1±0.2であった(単位:kcal/kg日、いずれもp<0.001)。以上のことから、男女共にメタボリックシンドロームの構成要素数が多いと単位体重あたり安静時代謝量が逆相関であり、HDLコレステロールと体重当たりの安静時代謝量とに正相関が見られたことから、代謝症候群で低下している代謝量を運動で補うことが重要であることがわかった。
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