研究概要 |
喫煙、飲酒、果物や野菜の摂取が少ない等の生活習慣はがんの発症や死亡のリスクを増加させると考えられる。電離放射線被曝もがんのリスクとなる事が知られている。 この研究では食道がんリスクにおける放射線被曝の長期的影響に対して、生活習慣の同時効果を調べた。調査対象者は線量推定システムDSO2に基づく放射線量が推定され、1980年の郵便調査において喫煙、飲酒、食習慣等の生活習慣情報が得られている広島・長崎の原爆被爆者38,430人である。がん発症の情報は広島、長崎の腫瘍登録ならびに組織登録から得られた。20年の追跡期間中に(507,549人年)に110症例の新規食道がん発症を認めた。食道がんの10万人年あたりの発生率は22であった。喫煙、飲酒、低頻度の緑黄色野菜の摂取、高温の飲食物の摂取は食道がんと強い関連がみられ、線量反応関係が有意であった。電離放射線被曝は食道がんのリスクを増加させたが、有意な線量反応関係は認められなかった。喫煙と飲酒の同時効果は食道がんに対し、相乗的であった。喫煙、飲酒、低頻度の野菜摂取、高温の飲食物等の不健康な生活習慣と放射線被曝が同時に作用した場合、相加モデルにおいても相乗モデルにおいても観察されたリスクは期待値より大きかった。しかし、相加モデルと相乗モデルのいずれについてもモデルを否定する証拠は得られず、相互効果がないことが示唆された。原爆被爆者コホート集団の食道がんリスクにおいて、不健康な生活習慣と放射線被曝の相乗効果は認められなかった。
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