最近、個人識別などのための多くのキットが市販されているが、陳旧試料や微量サンプルに対する法医鑑定時には、検出感度などに問題点があった。本研究を通してミトコンドリアやYのDNAのSNPを用いてきわめて変性した陳旧試料にも対応できる簡便なハプログループの識別法を開発した。具体的には、我々の開発したAPLP法(Amphlified Product-Length Polymorphism Analysis)を、ミトコンドリアやY染色体DNAのハプログループの判定に応用した。前年度までに開発したミトコンドリアの36個のSNPによるハプトグループの検出法を改良し、45個のSNPの検出法を確立した。さらにY染色体のハプログループを決定するためのSNPを選抜し、陳旧試料にも対応できるAPLP法よる系を新たに構築しつつある。ミトコンドリアやY染色体のハプログループは原則的には組換えが起こらないので、個人識別の観点からするとこれらの方法の効率はやや悪いが、突然範囲の順番が推定でき、系統樹を描くことができることから、モンゴロイド・コーカソイド・アフリカンの識別のためには最も適している方法である。これらの方法を用いて、多くの集団におけるハプログループ頻度を求めた。この方法は1回のPCRで6-9種類のSNPを同時に増幅し、電気泳動のバンドパターンから簡便に塩基置換を読み取る方法であるので、貴重な試料が節約できた。この方法は高価な機器が不要であり、きわめて低分子化したDNAにも対応できるのみならず、迅速・低コストであるので、実用的価値が明らかとなった。
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